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公益財団法人
吹田市健康づくり推進事業団

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循環器病予防 市民の集い
~健都から発信!学ぼう循環器病予防のこと~
循環器予防のための運動について
テーマ 「歩く達人になって健康寿命を延ばそう」
~膝痛や腰痛を防ぐ歩き方の実際~
講師 医療法人貴島会ダイナミックスポーツ医学研究所
顧問
土井 龍雄 氏
<スライド> 歩く達人になって健康寿命を延ばそうー膝痛や腰痛を防ぐ歩き方の実際ー
オンライン講座をご視聴いただいてありがとうございます。
この講座を担当する土井と申します。
よろしくお願いします。
今回のテーマは歩く達人になって、健康寿命を延ばそう。
サブテーマは膝痛や腰痛を防ぐ歩き方の実際です。
健康寿命とは、わかりやすく言えば、自立して生活できる寿命のことですが、健常者の場合、
健康寿命とは、歩行寿命だと考えています。つまり、自分の足で行きたいところへ行って、やりたいことができるのが、自立した生活だからです。
そして、いつまでも元気で、颯爽と歩き続ける人のことを歩く達人と呼んでいます。
ところが、年をとると、いろいろな原因で、元気に歩けなくなる人が増えてきます。その中でも、膝痛や腰痛は主要な原因になっています。
では今から、膝痛や腰痛を防いで、歩く達人になり、健康寿命を延ばす歩き方の実際についてお伝えしていきたいと思います。
<スライド> 【加齢による歩容の変化】
このスライドは、加齢による歩行の変化を示しています。
左の青年期は歩幅が広く元気に歩いていますが、真ん中の壮年期になると、少し歩幅が狭くなり、おとなしい歩き方になります。そして、右の老年期になると、さらに歩幅が狭くなり、背が丸く膝が曲がってきます。
ではなぜこのように、歩き方が変化するのでしょうか。
それは、年をとると体重を支えて地面を蹴る筋力が低下し、骨密度が低下して、背骨や膝関節が変形してくるからです。
では、右側の老年期の人は、左の青年期の歩き方を、真似て歩いていいのでしょうか。
いいえ。そんな歩き方をすると、変形している膝や背骨に無理な負担が加わって、ますます変形が進行し、歩けなくなってしまいます。
では、いつまでも元気に歩き続けるにはどうすればよいのでしょうか。
<スライド> 【ロコモティブシンドローム(運動器症候群)】
ロコモティブシンドロームという言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
これは日本整形外科学会が、2007年に提案しました。腰や膝の変形が原因となって、日常生活での自立度が低下し、要介護やその予備軍になる状態のことを言います。
これは、左に示すように、40歳以上の人を調査した結果、変形性腰椎症が3,790万人、変形性膝関節症が2,530万人、骨粗鬆症が1,070万人、このどれか一つ以上持病のある人が、4,700万人という結果が示されたことが基になっています。
つまり、40歳以上の多くの人が、どこかが傷んでいるということです。そして、右側に示すように、無理な歩き方などの生活動作と、筋力低下、柔軟性低下、バランス機能低下が加わると、歩けなくなるなどの生活活動障害を起こして、要介護になってしまうのです。
また、動けなくなって、大きな筋肉を使わなくなると、血液の流れが悪くなり、脂肪が体内に蓄積され、酸素が活性酸素に変化することで、心筋梗塞、脳梗塞、認知症、糖尿病、癌などを起こす原因にもなり、ますます要介護になる人が増えていきます。
ですから、足腰の変形とうまくつき合って、いつまでも元気に歩けるようにすることが重要なわけです。
<スライド> 【二足歩行による膝関節への負担】
このスライドは、歩くときの膝関節にかかる負担を示しています。
ムクグローサらのデータによると、普通歩行では、体重の2.8倍。速歩では、体重の4.4倍、
そして、階段下りでは、何と体重の4.9倍もの負担が、膝関節にかかるとされています。
私たちは無意識に歩いていますが、こんなにも大きな負担を膝関節にかけているのです。
ところが、この負担は歩き方によって随分変わってきます。
<スライド> 【歩行時の機械的ストレスを計測】
これは、左側が、歩くときの腰に加わる負担を、加速度計を使って計測している写真です。
右側がその結果表です。
腰に加速度センサーをつけたベルトを装着して、10メートル歩いていただきます。その時、加速度センサーに加わる衝撃を計測します。一歩一歩の加速度が無線で送信されて、その平均値がすぐに表示されます。この数値を見ると、歩いたときの、腰にかかっている負担がかかるわけです。ドスンドスンと歩く人は、数値が大きくて、滑らかに歩く人は数値が小さくなります。足腰を痛めない歩き方は滑らかな歩き方です。
次年度から、この計測を吹田市健康づくり推進事業団でも行う予定です。ホームページなどでお知らせしますので、ぜひご体験ください。
<スライド> 【歩き方による機械的ストレスの違い】
このグラフは、歩き方による腰に加わる機械的ストレスの違いを示しています。
横軸は歩く速度、縦軸は着地衝撃です。歩く速度の単位は時速。着地衝撃の単位はg(ジー)です。1gとは、重力加速度で体重と同じです。従って、2gだと体重の二倍、3gだと、体重の3倍になります。
グラフを見ていただくと、歩かないでじっとしているときは、歩行速度は時速0キロ。
着地衝撃は体重だけがかかっているので1gです。
そして、歩き始めると、歩く速度が速くなるほど着地衝撃は増加していきます。ところが、歩き方によって、着地衝撃には違いが生じてきます。例えば、時速6キロのところを見ると、滑らかに歩く人の着地衝撃は、1.4gですが、ドスンドスン歩く人は、2.2gになっています。この差は0.8gなので、歩き方の違いによっては、一歩一歩、体重の80%の差が生じるわけです。私たちは、歩くことによって、体に負荷をかけて、骨密度を維持しています。そして、血液循環とエネルギー代謝を促進しています。しかし、負荷が強すぎると足腰を痛めて歩けなくなってしまいます。いつまでも元気に歩き続けるには、足腰を痛めない歩き方を身につけるべきです。
では、足腰を痛めないためには、どのように歩いたらよいのでしょうか。歩き方を説明した次のビデオをご覧ください。
このビデオは、東日本大震災後に発症した生活不活発病の対策として作成しました。
<スライド> 【膝痛や腰痛を防ぐ「歩き方レッスン」】
(ビデオ 「歩く人。」長寿ウォーキングポイントレッスン)
長寿ウォーキングポイント1。
Q)「無理のない歩幅で歩く」、なぜこれが大事なのか教えてください。
A)私たちの歩幅というのは、普段は何気なく歩いているのですが、実はその人にちょうど合った歩幅というのがあります。例えば狭すぎると、体が前に行ってしまって、つまずいて転倒するということが起こったりします。逆に、皆さんは幅を伸ばすほうがいいと思って、歩幅を一生懸命伸ばして歩いているのですが、そうすると、一歩一歩地面からガツガツと強い衝撃がかかってきます。それで膝を痛めたり、腰を痛めたり、足を痛めたりする人がすごく多いです。そういう意味では、自分自身に合った歩き方をする。前のめりになったり、後ろに反り返ったりしない、そういう歩き方です。滑らかに上半身が乗っかってくる歩き方がいいのです。
皆さんも無理のない歩幅で歩きましょう。
長寿ウォーキングポイント4。
Q)「左右の足の間隔を取って歩く」、これがなぜ大事なのか教えてください。
A)左右の足の間隔というのは、具体的に言うと、右足と左足の間です。この間隔が、大体4~5センチくらい。バレーボールコートのラインの幅ぐらいを取って歩くと、強くて、安定した歩き方になります。そこがいい歩き方の重要なポイントです。
Q)一本の線の上をモデルさんのように歩くのが正しいと思っていたのですが、違うのですか?
A)一本線歩きがいいと言われていた頃もあるのですが、やっていただいたらすぐわかりますが、一本線の上を歩くのは、非常に左右のバランスが悪く、転倒しやすいです。あるいは、足を捻挫しやすいということも起こります。もう一つは、小指の上に重心が乗るということです。弱い小指の上に体重が乗るというのは故障のもとになります。
Q)小指ではなく、足のどこに力を入れて歩けばいいのでしょうか?
A)私は鼻緒に載せましょうと言っています。下駄の鼻緒、草履の鼻緒です。ここが一番強いところです。一番強いところに乗せる。そのためには、左右の間隔が取れている、歩隔が取れている。強いところに乗っていくと、故障も少なくなるし、力強い歩き方ができるということです。
皆さんも、左右の足の間隔をとって歩きましょう。
長寿ウォーキングポイント5
Q)つま先と膝を進行方向に向けて歩く、なぜこれが大事なのか教えてください。
A)これは、関節を捻らないで歩いて欲しいということです。よく見かけるのは、つま先を外向けてあるくガニ股歩き。つま先が外に向いているのに、膝が内に入る。結構女性に多いです。これはスポーツでは絶対やってはいけないことです。ニー・イン・ツゥー・アウトといって、靭帯を切ってしまいます。そうならないようにして欲しいです。逆に、内股歩きをすると、今度は内側に捻じれてしまう。そうすると、今度は膝の外側を痛めたり、ということが起こりますし、捻挫もしますから、これも絶対にやってはいけない歩き方です。
つまりは、つま先と膝はまっすぐ向けることが大事ということですね。皆さんもつま先と膝を、進行方向に向けて歩きましょう。
長寿ウォーキングポイント6
Q)踵から足裏全体にやわらかく着地して歩く、なぜこれが大事なのか教えてください。
A)私は体重75キロあるのですが、歩くときには、この75キロを片方の足で一歩一歩受けとめて歩くことになります。やってもらいたくないのは、一生懸命幅伸ばしてかかとから「ガツン!」といくことです。これは駄目ですね。そうならないように、踵から足裏に滑らかに着地していくという意識を持って歩いていただきたいということです。
皆さんも、踵から足裏全体にやわらかく着地して歩きましょう。
<スライド> 【無理のない歩幅で歩く】
では、ビデオの要点を押さえていきたいと思います。
まず、無理のない歩幅で歩く、からです。左端は、歩幅が狭すぎる前のめり歩きです。つまずいて転倒する大変危険な歩き方です。後ろ足を前に運ぶ動作をクリアランスといいますが、青年期の元気な時期でも、クリアランスでのつま先と地面の隙間は、約1センチです。
年をとって、筋力や柔軟性が低下してくると、足が上がらなくなって、この隙間がどんどん狭くなっていきます。
歩くときに意識することは、クリアランスで、股とつま先を上げることです。
次は、真ん中の歩幅を広くしすぎる歩き方です。自分の脚力以上に歩幅を広げると、上半身が遅れて反り返り歩きになりがちです。足は膝を伸ばして突っ張った着地になるため、地面から強い反力を受けて、足腰を痛める原因になります。
また、反り返りは、腰の太い神経を締め付けて、脊柱管狭窄症を悪化させる原因にもなります。
お勧めする歩幅は、右端のように、上半身が垂直を保って滑らかに前進する、ちょうどよい歩幅です。
<スライド> 【モデル歩行と歩隔をとった歩行】
次は、左右の足の横幅のとり方です。
左の図は、左右の足の横幅をとらないモデル歩きです。一本線の上を歩くので、左右のバランスが悪く、転倒の危険性があります。また、体重が、弱い小指側に乗るので足を痛めやすい歩き方です。お勧めしたいのは、左右の足の横幅を取る歩き方です。この横幅のことを、歩隔といいます。歩隔を取った歩き方は強くて、安定した歩き方です。歩隔の程度は、親指と人差し指の間に加重して蹴り出すくらいがいいです。
下駄や草履には鼻緒がありますが、これは鼻緒に加重して蹴り出すことができる日本人の知恵が生み出した履物だと思います。
<スライド> (外股捻じれと内股捻じれ 関節を捻じらないで歩く)
次のポイントは、関節を捻じらない歩き方です。
上の左側の図は、つま先が外側を向いて膝が正面を向いている外股捻じれの歩き方です。
これでは膝と足首が外側に捻じれて、関節軟骨や、関節内側の筋肉や腱を痛める原因になります。
右側の図は、日本人に多い内股捻じれです。これは逆に関節の外側が引き延ばされて痛めたり、足首の捻挫を起こしやすいやり方です。
また、このような捻じれ歩きをしている人は、後ろから見ると、かかとが左右に傾いている人が多いです。そして、靴のかかとは外側や内側が極端に片減りしています。お勧めしたいのは、つま先と膝を進行方向にまっすぐに向ける歩き方です。
基本練習では、鏡の前で、つま先と膝を同じ方向に真っすぐに踏み出して戻す、レックランジというトレーニング方法があります。
<スライド> (突っ張り歩行とキャッチ歩行 キャッチ歩行のポイント)
次は歩く達人になる、極めつけの歩き方です。
悪い歩き方は、上の左側の図に示している、つっぱり歩きです。無理に歩幅を伸ばそうとして、前方に足を振り出して、膝を伸ばし切って着地をしています。これでは、体が前方に進む力に対して強いブレーキをかけることになります。
よい歩き方は、右側のように地面を迎えいれるように着地します。これを私は、地面をキャッチするように着地するという意味から、キャッチ歩行と呼んでいます。
歩くとき、足は股関節を軸にして回転運動をしています。回転運動は、前、下、下、後、後、上、上、前へと運動の向きが変化しています。
前方に振り出した足を着地する瞬間は、前、下への回転運動の向きから、下、後ろへ切り替わるところです。この前、下から、下、後ろへ切り替わる前に着地すると、地面にはオレンジの矢印方向に力が加わるので、つっぱり歩行になります。下、後ろ方向に切り替わってから着地すると、緑の矢印方向に力が働くので、キャッチ歩行になります。
キャッチ方向では、下の図に示すように、足の回転運動を邪魔しないように、少し余裕を持った歩幅にします。そして、かかとの底から足裏全体で着地し、膝を少し曲げ、上半身をまっすぐ乗せて、体重をやわらかく受けとめます。
<スライド> 【階段の下り方】
階段下りは体重を、上の段から下の段へ下ろす動作なので、降り方によって足腰への負担が大きく変化します。右の図のように、上の段で重心を高くし、下の段で膝を伸ばして着地する降り方は、足腰に大きな負担が加わります。負担を小さくするポイントは、体重を降ろす段差を小さくすること。筋力を使って、着地衝撃を小さくすることです。
左の図は、負担を小さくする降り方です。下る落差を小さくするには、上の段で膝を曲げて、できるだけ重心を下げます。次に、着地衝撃を和らげるために、下段ではつま先から着地します。そして、足首、膝、股関節を支えている筋肉を働かせて、着地衝撃を吸収します。
階段下りでは、体を垂直に保つ必要があるので、特に、太ももの前の筋力が重要です。
また、モデル歩きや関節を捻じる降り方は、非常に危険なので、決して行わないでください。
なお、筋力が弱っている人や、関節痛のある人は、良い降り方ができないので、エレベーターやエスカレーターを利用してください。どうしても階段を下らなければならないときは、手すりを支えにして、後ろ向きで、体を前傾させてゆっくり下ってください。体を前傾することで、お尻の筋肉を使いやすくなるので、前向きよりも楽に下れます。
次は歩くために必要な筋力の話です。
〇膝伸展筋力測定とWBI(膝伸展筋力/体重)
この写真は膝を伸ばす太ももの筋力を計測しています。そして、WBIとは、この筋力を体重で割った指数です。
右の図に示すように、歩くためには、WBIの指数が0.4以上必要とされています。また、階段を下るためには、0.6以上必要とされています。
<スライド> 【ロコモ度別 膝伸展筋力体重比の比較】
このスライドは、自力歩行可能な451名の高齢者、平均年齢72歳の方々を対象に調査した結果です。左側に示すロコモ0は、膝や腰に生活動作の障害がないグループ。ロコモ1は、軽度の障害があるグループ。ロコモ2は中等度以上の障害があるグループです。
真ん中には、それぞれのグループの、WBIの平均値を示しています。
これによると、ロコモ0のグループは、0.46。ロコモ1のグループは、0.41、ロコモ2のグループは0.37となっています。
つまり、膝を伸ばす筋力と、生活動作の障害には関連性が示されていて、障害のないグループは0.46となっていました。
<スライド> 【空気椅子テスト(筋力トレーニング)】
この空気椅子テストは、測定の器具を使わない筋力テストです。また、筋力トレーニングとして行うこともできます。
やり方は、椅子に浅く座って、足を肩幅に開き、腕を前に延ばします。上体をやや前傾し、膝の角度が90度になるようにお尻を椅子から少し浮かして、その姿勢をキープします。
息を止めないで、1、2、3、4、5と声を出し、口を積むんで鼻から空気を吸います。
続けて、2、2、3、4、5、吸って、3、2、3、4、5、吸って、とカウントしながら空気椅子の姿勢をキープします。そして、太ももがきつい、あと10秒くらいしかできないと感じたら椅子にお尻を下ろします。
このやり方で、12、2、3、4、5、の60秒までキープできたら、先ほどのWBIが0.5になります。ただし、ぎりぎりまで頑張ると負担が強すぎるので、きつい、あと10秒くらいしかできないと感じたところで、少し余裕を残して終了してください。初めは60秒できなくても構いませんので、毎日継続してみましょう。3ヶ月間続けると、ほとんどの人が60秒できるようになります。
<スライド> 【片足立ちができなくなり、よちよち歩きにもどる】
人は1歳前後で、左の写真のように、よちよち歩きができるようになります。
ところが、片足立ちをさせようとしてもできません。そして、大体3歳から4歳になると、真ん中の写真のように、片足立ちができるようになり、大人に近い歩き方になります。そして、年をとって、脚力が低下しバランス機能が低下してくると、片足立ちができなくなって、よちよち歩きに戻ります。
ところが、筋力トレーニングとバランストレーニングを継続しておくと、いつまでも片足立ちができて、よちよち歩きになるのを防ぐことができます。健康寿命を延ばすには、次のスライドでご紹介する、片足立ちバランスのトレーニングを、毎日行っていただきたいと思います。
<スライド> 【片足立ちのバランストレーニング】
この図は、片足立ちバランストレーニングです。
まず、両足で立って、足の上に上半身をまっすぐに乗せて、肩の力を抜き、呼吸を整えます。
次に、膝を少し曲げて筋肉を使いやすい姿勢を取り、片側の足を少し浮かして、片足立ちになります。足の指は少し曲げて、足指でバランスを調節できるようにします。
視線は正面に向けて、1点を見ます。1、2、3、4、5、息を吸って、2、2、3、4、5、息を吸って、3、2、3,4,5,と数えて片足バランスを保持してください。目標は、12、2、3、4、の60秒間です。ただし、バランスが崩れたら頑張らないで、足を着いてください。足を着いたときは、途中から再開して、60秒まで行ってください。
例えば、5、2、3で足をついた場合は、5、2、3、4、5、から再開してください。毎日左右の足で60秒間行いましょう。
<スライド> 【ロコモ度別 片足立ち時間の比較】
これは先ほどのスライドと同様に、自力歩行可能な451名の高齢者平均年齢、72歳の方々を対象に調査した結果です。ロコモ0のグループの方足立ち秒数の平均値は、43.5秒、ロコモ1のグループは38.6秒、ロコモ2のグループは27秒でした。
この結果から、片足立ちの秒数と、生活動作の障害とは関連性が示されていて、障害のないグループは43.5秒でした。
<スライド> 【歩行時の関節の動き】
このイラストは、歩くときに、特に大切な関節を示しています。
左の図は、股関節と足首の関節。右の図は、足指の関節です。股関節を前後に開く柔軟性が悪くなると、歩幅を広げて歩けなくなります。次に、足首が硬くなると、後ろ足から、前足にスムーズに体を運べなくなります。また、足指の関節が硬くなると、足指を曲げて、かかとを上げて、足を後ろへ蹴り出せなくなります。
次のスライドから、これらの、関節の柔軟性を良くするストレッチをご紹介します。
<スライド> 【股関節を前後に開くストレッチ】
歩く前には、歩きやすくするための準備として、歩いた後には、疲れを保護するためのアフターケアとして、ストレッチを行ってください。
これは股関節を前後に開くストレッチです。
股関節の前と、お尻から太ももの後ろを伸ばして、股関節の前後の開きをよくします。注意事項として、股関節の手術をしている人は、ストレッチで関節脱臼する恐れがありますので、必ず主治医と相談してから行ってください。
ではやり方を説明します。
股関節を前後に開き、椅子に手をついて、バランスをとります。前後幅は図を参考にして、狭くならないようにしてください。床が固い場合は、膝が痛くないように、何かクッションを敷いてください。
左の図では、前の膝を曲げて、腰を前方にゆっくり移動し、股関節から太ももの前を伸ばしています。上体は、やや前傾してください。伸ばすときは、息を吐いて、矢印の辺りが突っ張るところで、4から5秒間保持します。ただし、痛みが出るところまでは伸ばさないように注意してください。
次は、ゆっくり腰を戻して、息を吸って、右の図のように腰を後ろに引いて、前足の膝を伸ばし、つま先を手前に引いて、お尻から太ももの後ろを伸ばします。余裕があれば、上体を前傾してください。以上のストレッチを5回から10回繰り返して、反対側も行ってください。
<スライド> 【足首のストレッチ】
次は、ふくらはぎとアキレス腱を伸ばして、足首の関節の曲がりを良くするストレッチです。
左の図のように、壁やテーブルなどの安定したところに手をついて、足を前後に開き、後ろ足のつま先を正面に向けます。左右足の横幅は、バランスをとるために、腰幅ぐらい開いてください。次に、右の図のように、後ろ足のかかとを床につけたままで、前足の膝を曲げて、ゆっくり腰を前方へ移動します。息を吐いて、矢印の辺りが突っ張るところで、4秒から5秒間保持します。
ただし、痛みが出るところまでは伸ばさないように注意してください。ゆっくり腰を戻して息を吸って、同じ動作を5回から10回繰り返します。反対側も同様に行ってください。
この写真は、足指関節のストレッチです。
<スライド> 【足ゆび関節のストレッチ】
左の写真のように、足を組んで、片側の足で、足首を固定し、反対側の手で、足指を、足裏側に曲げます。次に、右の写真のように、足の甲の方に伸ばします。この動作を、20秒間から30秒間、ゆっくり繰り返します。反対足も同様に行ってください。
足裏には、体重を感じ取る、感覚受容器が約7000個あり、特に足指関節の周囲に密集しています。このストレッチをすることで、歩くときのバランス感覚が良くなります。
<スライド> 【歩き方指導4回/月介入による変化(高齢者)】
このスライドは、平均年齢75.1歳、17名のグループに歩き方講習を、毎週1回、1ヶ月間行って、その前後に、歩行時の機械的ストレスを計測した結果です。
左側に、歩幅前向き加速度、上向き加速度、下向き加速度、左右向き加速度の項目を示しています。真ん中に、それぞれの項目の、講習前の平均値、右側に、1ヶ月後の平均値を示しています。歩幅は身長に対する割合で、加速度の単位はgです。
これらの数値を見ると、歩幅は、0.455から、0.437へ少し狭くなり、各方向の加速度は、すべて小さくなって、機械的ストレスが軽減しています。このデータは、高齢になっても、歩き方の練習をすれば、足腰に加わる負担を軽減できることを示しています。
次年度から、吹田市健康づくり推進事業団では、歩く達人になる講習会を開催する予定です。
ぜひご参加ください。
さて、次のスライドでは、新型コロナウイルス対策による外出自粛や、天候によって外出できないときに、室内で行っていただける、歩く練習のビデオをご覧いただきます。
おうちでウォーキングドリル実践編を始めます。
外出できない日は、歩行機能が衰えないように、おうちでウォーキングドリルをしましょう。
その場足踏みを挟みながら、歩くときに必要な動作を順に行います。
ご自身の体を操縦するつもりで動いてみましょう。
それでは、その場足踏みから始めます。
<ビデオ> 【おうちでウォーキングドリル】
(映像とテロップを参考にして行ってください)
これで、おうちでウォーキングドリル実践は終わります。
毎日行って、歩行機能を保ちましょう。
お疲れ様でした。
<スライド> 【歩く達人になるにはどうすればよいのか?】
では、最後に、歩く達人になるにはどうすればよいのか。
まとめさせていただきます。
1 中年以降になると、だんだんと軟骨の弾力性が低下して、膝関節や背骨が傷みやすくなってきます。歩行寿命を延ばして、いつまでも元気に歩くためには、足腰に無理をかけない歩き方を身につけてください。
2 筋肉は、歩くときに関節を動かすのと同時に、関節や背骨を守る役割があります。歩く達人になって歩行寿命を延ばすには、筋力トレーニングを行って、筋力を保持してください。
3 歩くとは、左右の足でバランスをとりながら移動する運動です。バランス機能が低下すると安定して歩けなくなります。片足バランスのトレーニングを継続して、バランス機能を保持してください。
4 滑らかに歩くには、関節の柔軟性が必要です。歩くだけでは、柔軟性は低下していきます。日々ストレッチを行って、柔軟性を保持してください。
5 エネルギーの確保と、細胞の新陳代謝のためには、バランスのよい栄養と、適度な休養が必要不可欠です。栄養と休養を確保しなければ、歩行寿命を伸ばせません。
6 人は社会的動物です。社会的活動を行うことによって、心と体の機能が維持されています。交流と活動の機会を作って、歩行機能を維持してください。
<スライド> 【ご視聴ありがとうございました。】
この写真は、46年前に、体操教室に参加された明治生まれの方々です。トレーニングを継続して、歩行寿命を延ばすことができました。
皆さんも歩く達人になるプログラムを実行して、いつまでも元気に歩き続けてください。
ご視聴ありがとうございました。